Activities事業内容
次世代型有用天然化合物の生産技術開発
AMED委託事業
(平成25年度~平成29年度で終了:現在は成果活用中)
実施体制(体制・役職は実施当時のもの)
- 研究開発代表者
- 産業技術総合研究所 創薬基盤研究部門 研究グループ長 新家 一男
- 研究開発分担者
- 北里大学 北里生命科学研究所 教授 池田 治生
- 理化学研究所 環境資源科学研究センター ユニットリーダー 高橋 俊二
- 東京大学 生物生産工学研究センター 准教授 葛山 智久
- 沖縄科学技術大学院大学学園 マリンゲノミックス・ユニット 教授 佐藤 矩行
- 東北大学 薬学研究科・分子薬科学専攻 教授 土井 隆行
- 琉球大学 熱帯生物圏研究センター 准教授 新里 尚也
- 福井県立大学 生物資源学研究科 教授 濱野 吉十
- 参画企業
- エーザイ(株)、オーピーバイオファクトリー(株)、クミアイ化学工業(株)、合同酒精(株)、塩野義製薬(株)、第一三共RDノバーレ(株)、日本マイクロバイオファーマ(株)、Meiji Seika ファルマ(株)、産業技術総合研究所、バイオ産業情報化コンソーシアム(JBIC)、北里研究所
事業概要
平成27年度より経済産業省から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に移管された委託事業「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発(天然化合物及びITを活用した革新的医薬品創出技術)」のうち、研究開発課題名「次世代型有用天然化合物の生産技術開発」を受託し、下記の研究開発を行った。
これまでのNEDO受託事業「有用天然化合物の安定的な生産技術開発(平成23~24年度)」では、放線菌が産出する天然化合物を安定かつ効率的に生産する技術の開発を行ったが、これを更に発展させて有用物質生産の高度化・高品質化を図るとともに、培養困難な海洋生物や土壌由来の微生物も対象とした技術開発を行い、有用物質生産の多様化を図った。
事業内容
1.有用天然化合物生産の高度化・高品質化
- これまで培ってきた正確なシークエンス解析技術をさらに高度化し、放線菌のようにGC含量が高く、繰り返しの多いゲノム配列についてもより正確にシークエンスできるようになった。その技術の高さは参画企業からも認識されており、自社化合物の異種発現生産に向けた生合成遺伝子クラスター情報の取得、遺伝子情報を用いた生産性向上あるいは生産性向上の因子解明といった目的のゲノム解析依頼は全部で83件あった。
- 有用天然化合物を生産する放線菌67株について150kb以上のBACライブラリーを調製し、そのうち27菌株の放線菌に対しては200kb超サイズのBACライブラリーの調製を行い、全て成功した。最大BACクローンは266kbであった。
- SAP法という線状染色体を用いるこれまでに無い画期的な新技術を開発することにより、生産性が高いもののこれまで遺伝子導入が困難であったS. avermitilis由来のSUKA株に対して200kb以上の種々の生合成遺伝子クラスターを導入することができることを確認した。
- 制御因子導入による化合物生産増強については、既知の臨床応用抗生物質など数個の化合物についてはその効果が確認できたが、未利用生合成遺伝子を含め多くの生合成遺伝子発現誘導あるいは生産性向上への汎用性はなかった。プロモーターに関しては、培養時期依存的プロモーターを発見・開発し、放線菌における二次代謝生産における遺伝子発現誘導における、これまでに無い最も強力なツールになることを明らかにした。これにより、通常の異種発現では全く生産しなかった化合物が生産できることが判明した。
2.有用天然化合物生産の多様化
- Pseudomonas属およびその近縁種と、Pseudomonas属以外では、Paenibacillus属(グラム陽性)、Bacillus属(グラム陽性)、Mycobacterium属(グラム陰性)、Lysobacter属(グラム陰性)、Sorangium属(グラム陰性)と、グラム陰性・陽性と多岐にわたり、生合成遺伝子クラスターの取得を行った(目的化合物生合成遺伝子10個、未利用遺伝子5個)。
- 難培養海洋微生物及び土壌微生物について、ゲノムを分解させずに BAC ライブラリー化する技術を開発した。土壌サンプルからは120kbを超えるBACクローンの開発が可能となった。この中から7個以上の生合成遺伝子クラスターを取得した。
- Pseudomonas属においては、Pseudomonas putida KT2440株およびBACベクターの改良を行う事により、異種発現可能なホストの開発を行うことができた。
- 79 個の未利用生合成遺伝子クラスターについて異種発現生産の検証を行い、11個の化合物(誘導体を除く)の異種発現に成功した。また、これとは別に未利用テルペン合成酵素7種を選抜し、異種発現の検討を行った結果、13個の新規化合物の創製に成功した。
以上のように、研究成果については、プロジェクト開始当初に設定したほぼすべての目標を100%あるいはそれ以上に達成する成果を得ることができた。また、その成果の水準は、例えばBACを用いた長鎖の生合成遺伝子クラスターのクローニングにおいては、223kb (最終的には213.9kbと同定)の生合成遺伝子クラスターの取得に成功するなど、世界的にみてもこのグループでしかなし得ないような成果を多く出している。また、放線菌を用いた異種発現においては、100kbを超える生合成遺伝子クラスターを用いての報告例は数えるほどしか無く、物質生産と言う、医薬あるいは工業的な応用研究に必須な技術を確立することが出来た。
参照URL(AMED):
https://www.amed.go.jp/program/list/11/01/005_h27-h29jigo.html